花はどこへいった
桜の開花が平年より12日も早まった年。
あの年の春、沈黙したのは、身勝手な願いからだった。
センス・オブ・ワンダーを少し働かせれば、気付けることだったのに。
サトウキビから、プラスチック。
ダイズから、エタノール。
空から、黄砂。
乱暴な時代があった。
白鳥が言った、
「私たちを、迫害しないでください。」
「迫害することを正当化しないでください。」
路上に血が流れるとき、
レーチェル・カーソンを読んだ。
レイン・ドッグを連れて、雨の森に出かけた。
彼女は、横たわる河から、森に飛び立つとき、
一番大切な贈り物を用意していてくれた。
「ここに来てよかった。」
黄砂は化学工場に集められていた。