温暖化時計

2009年11月22日

「わたしに、キッスをしたいの。」
死の直前、確実に死ぬとわかる数秒があった。
秋深い山で姉妹は、黙って向かい合い、精霊の声を聞いた。
見つめることで、忘れないように、瞳に姿を焼き付けた。
5才の少女の墓は、ただ土饅頭だった。

「小さな墓地ね。」
「海の向こうで死んだ人たちが、埋葬されている。」と、占い師が教えてくれた。
流れ着いたのは、ガラスの破片だけだった。
「人は死ぬともう会えなくなる。」と教えてくれた。
占い師は、流れ着いたガラスのカケラを拾い集め、墓地を作った。
「魂の再生を信じる?」
「いいや。」
300km先では戦争をしている。
空爆で銀色の雨が降り、ノバフタに拒絶された人の多くは、ガラスの雨に打たれて死んで行った。
30年前、ぼくは燃え盛る海でノアの方舟に乗っていた。

68億人いた地球の人口は、2016年以降、急激に減少を始めた。
水不足、感染症の拡大、食糧不作が続いた。
30年経っても、多くの魂は再生出来なかった。
少女だった肉体は消えさり、土饅頭は平らに戻った。

「わたしに触れていいのよ。」
人は肌を触れ合うことで、愛を感じ始める。
ぼくは30年後の未来から戻って来たハルミを抱き寄せた。
セックスをすると、みんな幸せになれる。



Posted by グリーンワーク at 19:33│Comments(0)
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