温暖化時計

2009年08月21日

政府与党による労働組合包囲網の中で、迷走状態が続いていた。
主流派の社会党系、非主流派の社会主義協会系、反主流派の共産党系の不協和音が強まり、中央委員会では、強硬路線が吹き出す中で、執行部は舵取りに追われていた。

どんな国策や、組織より、国民一人一人の命の方が重いはずなのに、全てを調べ上げて、国民には何も知らせないことが重要だった。
原因は、ほとんどの人に免疫力がないことや、エルニーニョだとされた。
温暖化の影響は、科学的根拠がないとして、国は解決には動かなかった。
こんな無謀な政策でも、一度動き出すと、誰も止められなかった。

いつか来た道と同じだ。

かつて、国は、「水俣病と水銀との因果関係はない。」とする熊本大学医学部教授の論文を支持した。
唯一の化学系財閥を2社に分割させるまでの猶予を持たせる国策だったと言われている。

「人間が増えすぎたから、減っていくだけ。」と、コメンテータがTVで言っている。
「環境に取り組んでいたら、企業は潰れる。」と、公務員が憐れんだ。
「環境活動家は、国賊だ。」と、ビジネスマンは言う。

街頭で、温暖化を訴えるビラ配りをしていた。
「どうせ人間一度は死ぬのや。」と、老人が言った。
「救済は、必要ないのですか?」と、ぼくは問い返した。
「悔しかったら、政治を変えろ。バーカ。」と、老人の寂しい訴えが宙に木霊した。

エコーだ。

「何もないような気がする。」
「何も残らない気がする。」

彼女は、宙の声を聞くことが出来た。


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Posted by グリーンワーク at 20:08│Comments(0)近未来小説
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