温暖化時計

2009年10月24日

地獄から生還した。
もう時計の針を見るのは止めよう。
罪なき人を支配できるのは、時間だけだ。
ジャネーは、人生の長短で、時間の比率が違うと説明した。
子供と、大人では、時間や、空間が違うからだ。
しかし、過去の出来事は同じだ。

命と引き換えに、重い後遺症を残した人がいる。
言葉をなくした子供がいる。

森の緑は深い闇に沈み、天から精霊が降りて来ることはなかった。
異常時に、心理は逆の方向を向いている。
ショックで頭が真っ白になる。
心は氷りつく。
正常性バリアスが働き、『非常事態ではない。』と思い込もうとする。

教授は、ガイドに誘導され、川を渡り領内に入ったが、1分もたたずに戻った。
しかし、追いかけて来た兵士に拘束された。
そこは旅行が制限され、暗号名で呼ばれる閉鎖都市だった。
地図にも記載されない閉鎖都市へは地元住民の移動も制限されていた。

教授は、海水温が上がると塩分濃度が高くなることを調査するために、シャチを追って流氷を運ぶ潮を遡っていた。
教授が上陸した村は、機関銃を持った兵士に囲まれ、広場に集められた村人は名簿に基づいて人数をチェクされ、殺された。
村は焼かれ、生き残った人々は山に逃れた。
深い闇の中で、幼い子供が泣き出し、心を鬼にして、妹を絞殺した姉妹がいた。
子供ほど、泣くことで、脳の活動を切り替え、気持ちの整理をつけることが出来る。
子供は、本当のことを隠そうとはしない。
「死ぬことで、精霊になれる。」と姉は言った。
教授は慰める言葉もなかった。
「光が必要だ。」
そう呟いた。
光は体温を上昇させ、ホルモンの活度を促し、身体を覚醒させてくれる。
体内時計だ。
耳の上のバイオロジカルモーションで、命を感じられるようになる。

姉は妹が精霊になっても自分の臭いを忘れないために、キッスをするように妹の唇に自分の唾液を飲ませた。



Posted by グリーンワーク at 15:50│Comments(0)
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