温暖化時計

2009年11月07日

ぼくの肩につかまり、彼は逝ってしまった。
通称ブルドッグと呼ばれる44口径の弾丸が彼の身体を貫いた。
「テロリストは、麻薬の代わりにエネルギーを密売し、暴力の連鎖が続く。」

哲人の風貌をしたゴン・アリューが最期に口にしたのは、心理戦の果てのパブリイクイメージだった。
「温暖化と、核廃絶は、20世紀に解決すべき問題だった。」
しかし、金と暴力の支配がそれを許さなかった。
「社会が家を建ててくれるわけではない。」
「国家に必要なものはマーケットと人だった。」

グローバル社会に必要なものはマーケットだ。
1970年以降急激に増加したCO2排出に対し、20世紀中は1.5℃上昇の危険性が指摘され始めた。
産業革命以前より世界の平均気温が1.5℃上昇することは、自然が再生のバランスを失い、ティピングポイント(融解点)を迎える引鉄となるからだった。
しかし、21世紀に入り、過去に出した温室効果ガスで1.5℃上昇が確実となるとわかると、人間が適応できなくなる2℃上昇がメルクマールに置き換えられた。
2℃上昇で、2040年頃から、地球の肺と呼ばれるアマゾンが乾燥化するからだ。

「温暖化と、核廃絶は、外交交渉のカードではない。」
リーマンショック以降、地球サミットでのブラジル・リオ宣言『持続可能な地球環境』は顧みられることはなかった。
危険な水準の明示がされないまま、金と暴力の支配は続いた。

「21世紀は、エネルギーが枯渇する。」
21世紀に入ると、経済界はオイルピークを囁きはじめた。
石油40年、天然ガス61年、ウラン64年、石炭227年と予測されていた。
もう助からないと思っていたが、ユートピアのモメンタムが奇跡を起こした。

温暖化で、北上を続けるドール(赤狗)を追ってきたゴン・アリューは、マラリアで焼かれた村から、アマツバメを育てる少女を連れて来た。
長い旅の果てに、ゴン・アリューは哲人の風格を身に付けていた。

まさかこんなことが起こるとは、少女は亡くなった父親と入れ替わりに産まれて来た年忌子だった。

少女は、父親の生まれ変わりではなかったが、答えを告げずに逝ってしまった父親の武士の魂を伝え出した。

「村人は『吸い込まれそうな深い森の中に精霊が棲んでいる。』と信じている。」



Posted by グリーンワーク at 21:15│Comments(0)
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