温暖化時計
「あなたは、これから、どこへいくの?」と、家から出て来た娘さんが訊いた。
彼女は素朴で、人懐こかった。
「南かな・・・。北へはこれ以上いけない気がするんだ。」
ぼくは言葉遊びをしているわけではない。
「壁があるから?」
ぼくが軽く頷くと、彼女は微笑んだ。
「私たちも、南から来たのよ。」
ぼくが、キャノンに出会う旅を続けていることを彼女は知らない。
長い旅の果てに、ようやく手にしたものは、重い風の中にあった。
群れて遊ぶ子供たちを見守る仏像のように壁は、きびしい表情でそびえている。
天空に虹が架かることもなかった。
かつて、旅の途中で、向かい風に吹き飛ばされたり、荒波にもまれたことがあった。
『こんな旅を、続けていても、しかたがない。』と、思えて来た日々が続いたことがあった。
毎日、呪文を孕んだ重い風が、吹き付けていた。
海は荒れ、船は港に釘付けになっていた。
北へ向かう船の出港をただ待っていた。
空に水色の青さはなく、ドシャブリの雨だけが、ただブルーズのように降っていた。
かつて人々は海を超えることに、憧れと敬意を抱いていた。
そこに、何か素晴らしいものがあると、信じていた。
しかし、現実には、それは伝説でしかなく、誰もその姿を見たことがなかった。
理由は分からないが、そいつは、人の姿を見ると消えてしまうのだ。
ぼくは、何だかすでに多くの時間が過ぎ去って行ってしまった気分になっていた。
人々も、また、一生分の旅をした気分になっていた。
なぜなら、すでに、ゲートは閉められていたからだ。
彼女は素朴で、人懐こかった。
「南かな・・・。北へはこれ以上いけない気がするんだ。」
ぼくは言葉遊びをしているわけではない。
「壁があるから?」
ぼくが軽く頷くと、彼女は微笑んだ。
「私たちも、南から来たのよ。」
ぼくが、キャノンに出会う旅を続けていることを彼女は知らない。
長い旅の果てに、ようやく手にしたものは、重い風の中にあった。
群れて遊ぶ子供たちを見守る仏像のように壁は、きびしい表情でそびえている。
天空に虹が架かることもなかった。
かつて、旅の途中で、向かい風に吹き飛ばされたり、荒波にもまれたことがあった。
『こんな旅を、続けていても、しかたがない。』と、思えて来た日々が続いたことがあった。
毎日、呪文を孕んだ重い風が、吹き付けていた。
海は荒れ、船は港に釘付けになっていた。
北へ向かう船の出港をただ待っていた。
空に水色の青さはなく、ドシャブリの雨だけが、ただブルーズのように降っていた。
かつて人々は海を超えることに、憧れと敬意を抱いていた。
そこに、何か素晴らしいものがあると、信じていた。
しかし、現実には、それは伝説でしかなく、誰もその姿を見たことがなかった。
理由は分からないが、そいつは、人の姿を見ると消えてしまうのだ。
ぼくは、何だかすでに多くの時間が過ぎ去って行ってしまった気分になっていた。
人々も、また、一生分の旅をした気分になっていた。
なぜなら、すでに、ゲートは閉められていたからだ。
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グリーンワーク
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07:42
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