温暖化時計
「世界は、利己と傲慢に充ち溢れている。」
2009.8.9 ナガサキ パン・ギムン
ナガサキから、世界に発せられたメッセージがカーラジオから流れては、消えていった。
赤狗(ドール)が棲む森に向かう途中で、サイキは、そのメッセージを聞いた。
すぐに、ゴン・アリューからの無線が、そのメッセージを遮っていた。
ゴン・アリューは、赤狗(ドール)が棲む森のレンジャーだ。
ゴン・アリューは、ドールの群れを追っていた。
ドールは歌うように鳴く。
犬は、赤狗(ドール)を非常に怖れるから、ドールの鳴き声を聞くだけで、軍用犬も逃げ出した。
テーブルの上には、軍事用の携帯電話機が置かれてあった。
往復2本の線を使う代わりに、往きの線1本だけを張り、返りの電流は、大地を導体代わりに利用している。
「レイドビキだ。」
それが、ゴン・アリューとの最後のセッションだった。
「次は世界の政治家の番だ。」
サイキは、パン・ギムンの言葉を吟味するように反芻していた。
2009.8.9 ナガサキ パン・ギムン
ナガサキから、世界に発せられたメッセージがカーラジオから流れては、消えていった。
赤狗(ドール)が棲む森に向かう途中で、サイキは、そのメッセージを聞いた。
すぐに、ゴン・アリューからの無線が、そのメッセージを遮っていた。
ゴン・アリューは、赤狗(ドール)が棲む森のレンジャーだ。
ゴン・アリューは、ドールの群れを追っていた。
ドールは歌うように鳴く。
犬は、赤狗(ドール)を非常に怖れるから、ドールの鳴き声を聞くだけで、軍用犬も逃げ出した。
テーブルの上には、軍事用の携帯電話機が置かれてあった。
往復2本の線を使う代わりに、往きの線1本だけを張り、返りの電流は、大地を導体代わりに利用している。
「レイドビキだ。」
それが、ゴン・アリューとの最後のセッションだった。
「次は世界の政治家の番だ。」
サイキは、パン・ギムンの言葉を吟味するように反芻していた。
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温暖化時計
再び、ハルミの歌声を聴いた。
ハルミの歌声は、以前より力強く、ナタを振り落とすようにギターを弾いていた。
地下鉄で行ける海に、制服の男たちがやって来た夏、ハルミは、男たちの上陸を阻止するピケ隊の中で唄っていた。
二本の弦をヒットさせるシンプルなリフのギターで、『ワルシャワ労働歌』を唄っていた。
情況と同じように混乱したシュプレヒコールの中で、聴衆は一瞬身を引き締めてから、どよめいた。
それは、どんな永遠よりも長く思える一瞬だった。
どこから、怒号と、暴力が飛んでくるかわからないピケ隊の中で、ハルミの歌は流れ始めた。
かつて人々は、王室や、上・中流階級には、それなりの敬意をはらって来た。
しかし、町を支えて来た炭鉱が閉鎖され、町には失業者が溢れた。
熱波がどこの町にも不況をもたらしている。
下積みの労働者たちは、生活の可能性は階級と同じで大望を抱くことができなくても、それはそれで幸せと考えて来たが、今では、職を失い、失業手当でビールを飲み、政府のやり方をあざけている。
それでも、人々の寒々とした訴えの声は、驚くほど静かだ。
そうした下積み労働者の寒々とした訴えは、重い風が吹き出した頃に、ようやく連帯として組織されていった。
ぼくに、愛と夢の深さを最初に気付かせてくれたのは、ハルミの歌声だった。
ハルミの歌声は、以前より力強く、ナタを振り落とすようにギターを弾いていた。
地下鉄で行ける海に、制服の男たちがやって来た夏、ハルミは、男たちの上陸を阻止するピケ隊の中で唄っていた。
二本の弦をヒットさせるシンプルなリフのギターで、『ワルシャワ労働歌』を唄っていた。
情況と同じように混乱したシュプレヒコールの中で、聴衆は一瞬身を引き締めてから、どよめいた。
それは、どんな永遠よりも長く思える一瞬だった。
どこから、怒号と、暴力が飛んでくるかわからないピケ隊の中で、ハルミの歌は流れ始めた。
かつて人々は、王室や、上・中流階級には、それなりの敬意をはらって来た。
しかし、町を支えて来た炭鉱が閉鎖され、町には失業者が溢れた。
熱波がどこの町にも不況をもたらしている。
下積みの労働者たちは、生活の可能性は階級と同じで大望を抱くことができなくても、それはそれで幸せと考えて来たが、今では、職を失い、失業手当でビールを飲み、政府のやり方をあざけている。
それでも、人々の寒々とした訴えの声は、驚くほど静かだ。
そうした下積み労働者の寒々とした訴えは、重い風が吹き出した頃に、ようやく連帯として組織されていった。
ぼくに、愛と夢の深さを最初に気付かせてくれたのは、ハルミの歌声だった。
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グリーンワーク
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