グリーンワーク

２２
桜の開花が平年より１２日も早まった年。
あの年の春、沈黙したのは、身勝手な願いからだった。
センス・オブ・ワンダーを少し働かせれば、気付けることだったのに。

サトウキビから、プラスチック。
ダイズから、エタノール。
空から、黄砂。

乱暴な時代があった。
白鳥が言った、
「私たちを、迫害しないでください。」
「迫害することを正当化しないでください。」

路上に血が流れるとき、
レーチェル・カーソンを読んだ。
レイン・ドッグを連れて、雨の森に出かけた。

彼女は、横たわる川から、森に飛び立つとき、
一番大切な贈り物を用意していてくれた。
「ここに来てよかった。」

黄砂は化学工場に集められていた。

６
一見その川は穏やかに流れていたが、
渡河点を見つけるには、
とても悲しくて、とても美しい心や魂が必要だった。
試練を超えることでしか、人は自分の価値に気付かない。

次に何をするかを、教えてくれる人が必要だった。
「昨夜、電話がつながらず、泣いていたんだろ？」
「いやなものでしょう？『ついて来るな。』って、言われること。」
まだ君は若く、そのほほをつたう涙も乾く。
「今日が一番幸せ。」

行き先のヒントがあるとすれば、その家だった。
公営団地住まいの労働階級には、
ごちそうはいらなかった、素朴な田舎のソウルフードがあれば十分だった。
豊かさや、便利さを手に入れても、何も悩みは消えなかった。
「わたしたちに、平安を与えてください。」
食べることを粗末にしてはいけない。

ミサでは、パンを 切り分ける際に歌われる　Agnus Dei。
世の罪を 除き給われる 神の 小羊 私達に 平和を 与えて 下さい。

春一番の便りとともに、薄雪草が咲きました。
風の質が問題だ。