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Posted by 滋賀咲くブログ at

温暖化時計

2009年07月21日

この物語の始まる初冬の朝、町は大型冷蔵庫の中にあった。
冬は、突然、背後にそびえる巨大な壁からやって来た。

吐く息が白く、空気そのものは透明で、緊張しているのがわかる。
寒さのために、夢から覚めてみると、冬は澄んだ声でよく笑い、ありふれた日常はユウウツに黙りこくっていた。
夢の記憶は、つかの間に消えて、消し忘れのスタンドの溜息を聞いていた。

目覚まし時計の臆病な秒針がヒクヒクと動いている。
ストーブ代わりの電熱器の上に、時が積もっては、身を焦がしていく。
失われた時間は、幽霊のように彷徨い、鳥肌を残す愛撫をしていった。

夢を見続ける気力も失せて、まるで毎日がフワフワと通り過ぎようとしている。
一番近いものは、いのち、夢、目覚め、喜び、悲しみ、渇き、希望、涙、苦悩、欲望、傷み、願い・・・・・・・・・、
のどれでもない。
通俗的な解釈に陥りがちな日常は、謎を掛け合うばかりで、その中で生活を選ぶことは、痛々しくて、人間的な不信がずっと付きまとう。

いのちは、ドアの外に隠語で書かれた欲望に似ている。


Posted by グリーンワーク at 05:41 Comments( 0 )